「不平等という名の平等」

──音無 Fade

そうだな、コーヒーを片手に考えてみると、
この世界はやっぱり、不平等だと思う。

生まれた場所も、言葉も、
背負ってきたものも、守られ方も。

誰かにとっての一年が、
誰かにとっては、一瞬にすらならないことがある。

時間でさえ、平等には流れていない気がする。
ある午後はやけに長く、
別の日は気づけば夜になっている。

けれど、そんなふうに思いながら、
ゆっくりと冷めていくコーヒーを見ていると、
ひとつだけ確かなことが浮かんでくる。

それは――
不平等という名の平等が、
私たちの足元に、そっと置かれているということ。

どんなに富を持っていても、
どれだけ何も持っていなくても、
時間を買うことはできない。

1日が24時間であるということだけは、
誰にも平等に与えられている。

だから私は、
せめてこの一杯のコーヒーだけは
自分のために飲みたいと思う。

冷めかけたコーヒーの香りとともに、
そんなことを考えている午後。

この世界にも、
少しだけ希望はある気がした。

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