「きみの声が消えた日」
音無fade– 冷たい風が吹いて、 ああ、秋が夜からやってきたと気づく。 昼間はまだ夏のふりをしているくせに、 夜だけは正直だ。 空気が澄んで、音の輪郭が際立つ。 虫の声さえ、誰かの足音みたいに聞こえる夜だった。 駅までの帰り道、 コンビニの袋がかさつく音が、やけに大きい。 きみが隣にいたころは、 あんな音なんて聞こえなかったのに。 秋は好きだ。 静かで、落ち着いていて、 ひとりになっ […]
音無fade– 冷たい風が吹いて、 ああ、秋が夜からやってきたと気づく。 昼間はまだ夏のふりをしているくせに、 夜だけは正直だ。 空気が澄んで、音の輪郭が際立つ。 虫の声さえ、誰かの足音みたいに聞こえる夜だった。 駅までの帰り道、 コンビニの袋がかさつく音が、やけに大きい。 きみが隣にいたころは、 あんな音なんて聞こえなかったのに。 秋は好きだ。 静かで、落ち着いていて、 ひとりになっ […]