Warning: Trying to access array offset on false in /home/xs787186/cafelife888.blog/public_html/wp-content/plugins/ads-txt-manager/includes/class-adstxtmanager-solution-factory.php on line 19
「アメジストを照らす月」│音を失くして
Warning: Undefined array key "twitterId" in /home/xs787186/cafelife888.blog/public_html/wp-content/themes/the-thor/inc/seo/ogp.php on line 117

「アメジストを照らす月」

音無fade–

秋は、いつも夜から先にやってくる。
まだ昼間は夏の名残を引きずっているのに、
夜になると空気が少しだけ冷たくて、
頬を撫でる風が、言葉よりも先に季節を教えてくれる。
窓辺に置いたアメジストを、月の光が照らしていた。
紫の結晶の奥で、わずかな光が跳ね返り、
部屋の壁に小さな影を落としている。
たったそれだけのことなのに、
胸の奥で、遠い記憶が揺れた気がした。
虫の声が、途切れることなく続いている。
それは、時間の粒を数えているようにも聞こえた。
夜に溶け込む小さな音たちを、
ひとつひとつ拾い上げるように耳を澄ませる。
ふと、思う。
この広い夜空の下で、
自分の存在は、なんて小さいんだろう。
マクロの視点なんて、とうてい持てない。
銀河を俯瞰するよりも、
足元の影や、窓辺の光ばかりを追いかけてしまう。
それでも、空は見上げてしまう。
澄んだ空気の向こう、
月が、あまりにも静かに浮かんでいた。
遠い宇宙を思い描くたびに、
その果てしなさに、胸が少しだけ痛む。
いつだって、
大きな世界を掴むことができないまま、
目の前の小さな欠片ばかりを愛してしまう自分がいる。
アメジストは、まだ月光を浴び続けている。
その透明な影を、ただ黙って見つめていた。
虫の声、夜の匂い、澄んだ空気、遠い宇宙。
すべてが同時にここにあって、
だけど、すべてが手のひらからすり抜けていく。
この夜もきっと、
誰にも気づかれないまま過ぎてゆくのだろう。
それでも私は、
こうして、静かに見送ることしかできない。
──秋は、夜からやってきて、
気づけば胸の奥に、ひっそりと居座っていた。

最新情報をチェックしよう!

    Warning: Undefined array key "twitterId" in /home/xs787186/cafelife888.blog/public_html/wp-content/themes/the-thor/template-parts/single-snsfollow.php on line 36

Warning: Undefined array key "twitterId" in /home/xs787186/cafelife888.blog/public_html/wp-content/themes/the-thor/footer.php on line 404