「予定表の空白だけが、正直だった」

音無Fade

くだらない予定だけが、
今日もまたひとつ、埋まっていく。

それらは決まって、
「前向き」とか「価値創造」とか、
綺麗な言葉で飾られているけれど、
本当は、なくなったところで誰も困らない。

ただ、黙っていればいいのに。
「この時間が、未来を変える」なんて言うから、
余計に薄っぺらくなる。

付き合っているこっちの顔が引きつる。
相槌のリズム、表情の角度、
心ここにあらずのまま「建設的な場」を演じる。
うんざりしているのに、
誰よりもうまく馴染んでる自分に腹が立つ。

電車の窓に映った自分が、
ずいぶん疲れて見えた。
いや、疲れているふりをしていた。
何もかも分かったような顔で、
本当は、何も変えられていない。

いつのまにか、
「忙しさ」が一番都合のいい逃げ道になっていた。

誰かに必要とされるふりをしながら、
本当の自分を見失っていく。
そうして今、
空白の予定だけが、
唯一“正直”な時間のような気がしている。

最新情報をチェックしよう!