音無Fade
青い空が、
あまりにもよく晴れていて、
それだけで、
なぜか置いていかれたような気持ちになる。
道の向こうでは、
制服の高校生たちが、部活帰りの笑い声を響かせていた。
汗をかくことも、日焼けも、
この季節の一部としてまっすぐ受け止めている人たち。
まぶしいと思った。
でも、少しうるさくも感じた。
私はといえば、
エアコンの効いた部屋から出る気にもなれず、
コンビニで買ったアイスコーヒーを
ただ黙って飲んでいた。
誰もが何かに向かって進んでいるようで、
自分だけが足踏みしているような気がするのは、
きっとこの季節のせいだ。
子どもの頃は、
夏が好きだった。
自由で、眩しくて、
終わりなんて気にしなくてもよかった。
でも大人になってからの夏は、
暑さばかりが記憶に残るようになった。
“いま何かをしないといけない”という
妙な焦りと、
“結局なにもできなかった”という
ぼんやりとした罪悪感と。
好きになれない。
でも、忘れられない。
夏はいつも、
そのどちらでもなく、
私のそばに立っている。