想の余熱

— 音無Fade —

想いを伝えたくて、
言葉を探していた。

予想よりも、
心はずっと複雑で、
でもそれを伝えるには、
簡単すぎる言葉しか持っていなかった。

回想にひたりながら、
湯気を見つめていた。
あなたの声が思い出せるうちは、
まだ少しだけ安心だった。

妄想だとわかっていても、
あの人が振り返る気がして、
背中を向けたまま歩いた。

発想の自由がほしいと願いながら、
感情はいつも
誰かに縛られていた。

想像だけが、
あの人をやさしいまま
私に残してくれる。

 *

想いが言葉にならないことが
いちばんの誤解を生むと、
ようやく知った。

予想もしなかった沈黙が、
気持ちを少しずつ冷ましていく。

回想はやさしく、
でも同時に、
もう戻れないことも教えてくれる。

妄想のなかでしか
あの夜の続きを作れないことに、
気づいていた。

発想が止まった夜、
現実がすこし、
近づきすぎていた。

そして最後に、想像だけが残る。
やさしさも言い訳も、
ぜんぶ包んで、そっと置いていった。

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