[ブログ小説] 揺れる故意

コーヒーの香りとJAZZが、俺をリラックスさせてくれる。
「で、話ってなにかな?」
俺は、本題に入ることにした。
「あ……はい」
少し緊張した面持ちの琴音ちゃんである。
「えっとですね……あの……祐人さんは、茉莉ちゃんとは幼馴染みなんですよね? その……小さいころから仲良かったんですか?」
「うん、そうだよ。物心つく前から一緒だったからね~」
「へー、そうですか……」
あれ? 何だこの反応は……。なんか、ちょっとだけ不満そうな感じもするんだけど……。
「じゃあ、もうお互いの家に行き来したりしてたんですか?」
「う~ん、どうだろう。結構、そういうこともしていたような気がするけど……でも、小学校高学年くらいからは、あんまり行かなくなったかもね」
「そっかぁ……ふむふむ……」
何やら思案顔になる琴音ちゃん。
「まあ、でもそれは仕方ないよね。だって、ほら、お互いに思春期だからさ! 男の子と女の子が一緒にいるだけで、変な噂になったりするし!」
これは事実なので、自信を持って言うことができた。
しかし、俺の言葉を聞いた琴音ちゃんの顔色がみるみると変わっていく。
「ゆ、ゆうくん……それってどういうこと?」
あれれ!? なんでそんなに怖い顔をしているんだろう!?それに『ゆうくん』呼びになっているし!
「ど、どういうことって言われても……」
「ねえ、ゆうくん、教えて? ゆうくんと茉莉ちゃんの噂になったってどういうことなのかしら?」
いつもの丁寧語口調ではなく、なぜか敬語で話す琴音ちゃん。
さらに、なぜだか笑顔なのだが目が笑っていないという器用なことをしている。
こわい……。
「いや、別に大したことじゃないんだよ? ただ、小学生のときに僕たち二人が付き合ってるんじゃないかとか、よくわからない噂が流れたりしたことがあっただけだから」
「…………」
今度は無言になってしまった琴音ちゃん。
なんだか雲行きが怪しくなってきたぞ。
「えっと、それで今の話を聞いて琴音ちゃんは何を聞きたかったのかな?」
「いえ、特に何もありませんわ、祐人さん。ただ確認したいことがありましたので」
急に丁寧な言葉遣いに戻る琴音ちゃん。
「そ、そうかい……」
一体、何の確認をしたかったのか……。
「はい、それだけです」
ニッコリ笑う琴音ちゃん。そして、そのまま立ち上がると、ごちそうさまと言った。
その後ろ姿を見ながら俺は思った。
(今日はもう帰った方がいいかもしれない)
俺は残りのコーヒーを飲み干すと、カバンを持って立ち上がった。
「じゃあ、僕は帰るよ。また明日ね」
「はい、お気をつけて帰ってくださいね、祐人さん」
振り返った琴音ちゃんは笑顔を浮かべていた。
うん、やっぱり琴音ちゃんは笑ってる方が可愛いと思うよ! 俺は心の中でつぶやくと、家路についた

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