コーヒーが夫婦の関係を紡いでくれたお話です。
夫はコーヒーを飲む習慣のない人でした。
逆に妻である私はコーヒーを飲む習慣の両親のもとに育ち、私も自然の流れで飲むようになりました。
夫に勧めましたが、暖簾に腕押し状態。
しかし、二人でデートに行ったとき、紅茶がないと言われてしまったのです。
そこで見栄っ張りな夫は「じゃあ、コーヒーで」と言いました。
そこで初めて夫婦でコーヒーを飲む時間ができました。
最初、恐る恐る飲んでいた夫も「なんだ、美味しいじゃん」と言ったのですから、よく覚えています。
それからと言うもの、お菓子タイムにはコーヒーを淹れるようになりました。
コーヒーにこだわりがあったわけではなかったので、最初はインスタントでした。
インスタントでも、充分に夫婦の時間を持てることが嬉しかったです。
ほんの一息つきたいときに、どちらかが淹れるコーヒー。
美味しいものです。
インスタントから、ワンランク上に変わるきっかけをくれたのは夫でした。
夫が海外出張でジャマイカに行ったとき、出張先の外国人に勧められるままに、コーヒー豆を買ってきたのです。
インスタントのように淹れられると思っていた夫に、笑うほかなかったこと、今でも覚えています。
それから急いでコーヒードリッパーを買ってきて、淹れました。
「うん、違うね」
と、コーヒーの香りに、感嘆しました。
それからというもの、海外出張でジャマイカと縁があった際は、お土産にコーヒー豆を買って帰るようになりました。
そのころはコロナなどの規制もなく、頻回に行っていましたので、またたく間に、家の中はコーヒー豆で溢れかえるようでした。
「もう、充分あるから」
「次、いつ行くか分からないから」
と、夫の収集癖に火がついたようでした。
そこで、こっそりと、ご近所さんにお裾分けしていた私です。
海外旅行に行く機会も多かったので、
「ここのコーヒーが美味しいらしい」
といった情報を見つけては、行き方を調べて意気込んで行ったことも覚えています。
コーヒーにスパイスを合わせた変わった味のものもあり、顔を見合わせて「うーん」と唸ったこともありました。
旅行に行って、趣あるカフェを訪れて、そこで味わうコーヒーも時間もたまらなく美味しいものです。
ですが、家で淹れたコーヒーとともに紡ぐ時間に勝るものはないかも知れません。
時間は有限ですから、一秒、一瞬、できれば濃くしたいと想っています。
私は今日も、夫に、自分に、コーヒーを淹れて時間を紡ぎます。