沈黙より重いもの
──音無 Fade あのときに戻れたら。 言い尽くされた言葉のはずだった。 けれど、胸の奥のどこかで、 それを口にすることすら憚られるような、 確かな悔いが棲みついている。 – なぜ、もう少しだけ 考えてあげることができなかったのだろう。 いや、考える時間ならあった。 けれど私は、 “考えなかった”ほうを選んだのだと思う。 – 取り巻くものが、変わりすぎた。 目まぐるしい更新と、 置いていかれまい […]
──音無 Fade あのときに戻れたら。 言い尽くされた言葉のはずだった。 けれど、胸の奥のどこかで、 それを口にすることすら憚られるような、 確かな悔いが棲みついている。 – なぜ、もう少しだけ 考えてあげることができなかったのだろう。 いや、考える時間ならあった。 けれど私は、 “考えなかった”ほうを選んだのだと思う。 – 取り巻くものが、変わりすぎた。 目まぐるしい更新と、 置いていかれまい […]
──音無 Fade 空気が止まったようなこの午後に、 誰のせいでもない“終わり”だけが、 部屋の中に残っていた。 カーテンは揺れていないのに、 なぜか風が吹いたような気がした。 あなたがいなくなったことと、 それを“仕方がない”と思えてしまう自分が、 少しずつ部屋の隅に溜まっていく。 – たぶん、何かを言うべきだった。 だけど、 あなたが最後に何を言ったのか、もう覚えていない。 いや、覚えようとし […]
── 音無 Fade けだるいテンポでJAZZ HIPHOPが流れていた。 重たく沈んだビートが、 誰もいないこの部屋の空気を、少しだけ揺らしている。 コーヒーは、もうぬるくなっていた。 窓の外には、夜の気配が降りてきていて、 街灯の光が、まるで溶けかけたバターみたいに滲んでいた。 – あなたと最後に話したのは、 こんな夜だったかもしれない。 「じゃあ、またね」 その一言の重さに、 お互い気づかな […]